名古屋国際女子マラソン

2008年3月10日
 北京オリンピック女子代表選考レースの名古屋国際女子マラソンがおこなわれた。選考の最終レース、ということで女子の主だった選手が揃い日本女子マラソンの層の厚さを感じさせた。高橋尚子、坂本直子、原裕子、弘山晴美などオリンピックメダリストや国際大会入賞実績を持つメンバー、気鋭の新人たちが顔を揃える結果となった。
 大会は既に内定(土佐礼子)や有力(野口みずき)となっているランナーよりも、大阪国際で日本人最上位(2位)となった森本友選手(天満屋)の記録を上回り、且つ、優勝・レース内容までが吟味される、という制約の多いまな板に乗ってのレースになった。あらゆる意味で注目されていた高橋尚子が10km手前で失速してしまい、レースがどんな展開を見せるのだろうか?という興味で見守っていたが、21歳初マラソンの中村友梨香(天満屋)が2:25:51で後半5kmを劇的なペースで走り切り優勝した。
 高橋尚子はシドニー金メダル以降、体制変更・故障に悩まされた7年間を過ごし、今回も昨年8月に膝の半月板半分切除というランナーにとっては致命的な手術を受けていたそうである。もともと小出監督の袂を分かったときから新たなマラソン人生を踏み出したわけなのだが、チームを率いながら自分もトレーニングを積み上げてゆく、ということは言葉では言えても実際にこれを成し遂げてゆくことは計り知れない負担があることだと思う。一枚看板で資金を集め、チームを維持してゆくための算段をし、スポンサーに気を遣い、チームの人的管理をし、当然ながら自分のトレーニングやレース組み立てをする。これは起業した事業を経営することに匹敵するほど大変なことである。
 レース惨敗後、記者会見で明らかにされたことしか我々はわからないが、会見に出てきて顛末とこれからの方針を示唆している高橋さんをみていると、一介のアスリートを突きぬけ始めた逞しさと成長を垣間見た気がしてこれから一層目が離せないことを実感した。

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