アースマラソンサポート記 北米横断34日目

2009年4月20日
KANPEI EARTH Marathon-090420-2 遂にロッキー越えの日がきた。

 昨夜は温泉リゾート地Pagosa Springs泊まりだったが、温泉にも入ることなく休んでしまった。今朝の気温は0℃。モーテルの駐車場でコロラド州の旗を掲揚柱にあげているおじさんがいた。この光景はここらでは当たり前のことなんだろう。かつての日本でも見慣れていた光景だが、最近はあまりみかけない。ちょっと残念な気がする。

 昨日はロッキー山脈の南端、ウルフクリークまであと15km地点がフィニッシュだったので、モーテルから移動して今日のスタート地へ向かう。峠道は車の行き交いで危険なので、自転車伴走は登り口まで、ということにした。針葉樹が岩山を覆い、その木々の間には荒々しい岩肌が露出、残雪が多く残った景色は美しい。空はあくまで澄み切った青、時折真っ白な飛行機雲が鮮やかなラインを引いてゆく・・・。早朝の静寂はなんとも言えず荘厳な気分にさせてくれる。

 今朝の寛平さんは、いつものウエアの上から防寒用のジャケット上下を着こみ、手袋と毛糸の帽子、といういでたちでスタートした。今日は、ウルフクリークの上り口まで15km、そこから8マイル(12.8km)を上り、8マイルを下ってから、さらに10kmほど走る合計50kmに及ぶロッキーの峠越えだ。走り始めて5km、来ていた防寒着が暑く、あっという間に汗びっしょり。「こんなんあかんわ、坂もっさんわしを殺すんかいな・・(笑)」といいつつ、上着を脱ぎ捨てる。ここから15km地点まで自転車で伴走することにした。

 走りながらいろんな話に花が咲いた。東京に出てくるまでの話や東京に出てきてからの話、そして寛平さんにとってエポックとなった比企さんとの出会いなど、ガンガン話が口をついて出てくる。その話の端々に寛平さんの人生観が感じられる。「人への優しさ、自分への厳しさ」といった寛平イズムだ。話すにつれてランニングのピッチがどんどん上がってくる。話しているのか走っているのかわからないほど話に熱が入り、気がついたら登り口の休憩ポイントについてしまった。池田君が作ってくれたお粥を食べながら「静かやなぁ・・」と一言、とそこに「コンコンコン・・・・」とキツツキが木をつつく音。一同、「やっぱりロッキーかぁ・・・・」と妙なことに感心。

 さて、ウルフクリークの上り坂。ここからは寛平さんの一人旅だ。時折大きなコンボイやRV車が通りすぎてゆく。淡々と、しかし着実に上ってゆく寛平さん。最大斜度7%というきつい上りが随所に出てくる8マイルに及ぶ上り坂。眼下に上ってきた道がうねうねと見えるが、眼中にない様子で上る。12:00標高が3010mに達する。しきりに呼吸を苦しがる。酸素がどんどん希薄になっているからだ。「脚に酸素がいかへん」「腕に電気が走るでぇ」。寛平さんは実に粘り強い。酸素が薄く走ることがつらくなってもちょっと走っては歩き、また少し走っては歩く、という繰り返しで頂上を目指す。

 なんだか胸がいっぱいになってくる。去年の12月17日に大阪を出発後、比企さんと過ごしたたった二人の太平洋横断航海。息つく間もなくロングビーチを出発した北米横断走。気が狂いそうなくらい単調で暑かったカリフォルニアの砂漠を抜けたら、今度は雪と低温の山岳にへばりついてるのだ。いろんなことを思い起こすとつい、言葉を失ってしまう。

 そして12:56、遂にウルフクリークの頂点に到達した!!標高は3307m。ニューバランスジャパンから差し入れられた寄せ書きを体に巻きつけて、ロッキー峠頂上で記念撮影。スタッフにも畏敬の表情と安堵の表情が思わず走る。 KANPEI EARTH Marathon-090420-1
 それからおよそ22kmもの長い下りを走って標高2600m地点で昼食をとる。アツアツにした中華丼のレトルトパックをご飯にかけて食べる。「ヒットやな、それもクリーンヒット」なんて言いながらスタッフと一緒に食す。しばしの休憩をはさんで「さ、今度は下りやな。ま、ぼちぼちゆきますわ」と言い残し、走りだす。

 R160の周囲には人間の侵入を拒むくらいの岩壁がそびえている。雪解け水が流れる川に沿って下る道だが、路肩が狭く走りにくそうだ。それでも予定の50km(リオグランデ)を走り、前半の目標としていた「ロッキー越え」を無事に終えることができた。今夜の泊まりはSouth Fork、ここに2泊する予定だ。

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