アースマラソンサポート記 北米横断-一時帰国

2009年5月 6日
 ダグラスと私は今朝、寛平さんやチームと別れた。デビットのチーム復帰でダグラスが交替、私は日本でたまっている仕事の整理で二度目の一時帰国だ。

 昨夜はGarden Cityで2泊したコンフォートインモーテルのオーナー宅に泊めてもらった。といっても有料。寛平さんの走りの予定から考えると、もう1泊Garden Cityに泊まりたかったのだが、このあたりの農家が集まって行われる農業コンベンションがあって、Garden City中の宿泊施設が満タンで予約が取れず、ダッジシティというところに宿をとらなければならないことになっていた。これを聞いたオーナーから自宅を使ったらどうか?という提案があったのである。このあたりではこういうことはよくあるらしく、自宅を有料で開放し、さまざまな方法で使ってもらおう、というものだ。

 オーナー宅では、我々のほかにも近所のご婦人がたの集まりがあった。休日のこの日は外食をやめ、家で食事をつくることにした。近くのショッピングセンターに行き、簡単な食材を調達。今夜の食事はハムステーキとほうれん草のおひたし、テイクアウトできるサラダバイキングの詰め合わせと、成瀬さんからおもたせのすき焼きだ。ハムステーキは1cm以上の厚さにハムを切り、塩とコショーをかけて軽く焦げ目ができるまでサラダオイルで焼くだけ。これに温かいご飯と、しっかりと出汁をきかせた卵の味噌汁があれば本当に十分!トマトサラダ、例によってらっきょう、海苔の佃煮なども食卓に並ぶ。

 このお宅はかなり広く、落ち着いた調度品でまとめられた室内は素晴らしかった。あちこちに大きな冷蔵庫があり、食材もデザートもどっさり入っているし、コーヒーメーカーも浴室もともかく豊か。私が使わせてもらった台所もよだれが出そうなくらい充実した設備だったので、器も鍋類もガステーブルもゆったり使って調理ができたのである。たまにこんな日があっても面白いし、息抜きにもなっていい。寛平さんはこの日、すごく深く眠れた、といっていた。

 朝6時半、オーナーに見送られて出発。R50に出ると霧雨が降っていた。でも東の空は明るく、長続きはしない感じ。案の定、スタート地点では一面の霧に変わっていた。この霧が晴れたら今日は暑くなりそうだ。朝日があがるにつれて四囲の景色が見えてくる。朝日と平原の緑と霧が幻想的な朝方の情景を創り出してゆく。

 寛平さん、一昨日の走りでアキレス腱が張って軽い痛みがあるそうだ。理由は路面。寛平さんの好きな砂利を被ったアスファルトが影を潜め、砂のない路面に変わってきたため、着地・踏切がダイレクトにふくらはぎに響くらしい。路面に合わせて負担の軽い走りをしてきた寛平さん、これからの路面対応をどうしてゆくか?またまた工夫の始まりになるかも知れない。何しろ下見の無い本番だから、道路も出たとこ勝負なのである。それが面白く、寛平アースはもっともっとさまざまに、時に劇的に、そしてむき出しの人と人との触れ合いを、皆さんや「アースワールド」に興味をお持ちの皆さんに伝えてゆきたいと思っている。寛平さんとはまたしばらく(といっても二週間くらいかな?)お別れです。前回は一時帰国中、ブログは中断しましたが、これからはいろんな角度でアースを書いてゆこうとおもってますのでお楽しみに!

 今、眼下にはカンザスの大草原が広がっている。ウイチタから乗ったこの飛行機はデンバーに向かっている。見渡す限りの平原には緑一色の小麦畑と茶色のコーン畑が円や四角に整然と並んで見える。それらの平原に一直線に定規で引かれたような道路のラインが伸びている。上空からみても真っ直ぐな様子が鮮明だが、この直線道路を毎日コツコツと一歩一歩走り続けている寛平さんの姿が鮮やかに網膜に蘇ってくる。これは蟻んこのような歩みの積み重ね。コロラドのロッキーを越えてから行けども行けども曲がらない道を走る辛さをふつうは感じるのだろうが、寛平さんは日々のランニングについて「こんなに有り難くて、幸せなことはないでえ・・ホンマ、感謝やなあ」と言い切っている。走りの合間に交わす会話の中でも今の自分、アースマラソンのような、したくても絶対にできないことを、周りのすべての人たちの力によって叶えさせてもらえているという感謝の気持ちを、随所で聞かせてもらうことがある。これは正直者寛平さんの偽らざる心境であろう。少なくとも私には寛平さんが体現しているアースマラソンは「人」がともに手を携えて次世代に伝えてゆかなければならない「友愛・慈しみ・誠意・寛容・謙虚さ」といった今は見失われかけている人間に必要な「本質」を問わず語りに語りかけているように思えてならない。そして、美辞麗句や世辞のような虚飾な表現ではなく、質朴な「走り」という行為で伝えているところが寛平さんという人物の大きさと慈愛を強烈に印象づけられるのである。

 気が遠くなるほど広大なアメリカは、まだほんの一部でしかない・・・。

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