アースマラソンサポート記 北米横断74日目

2009年6月 5日
走行74日目。
今日はDePue~Wedronまでの60km。スタートのSpring Valleyを出てすぐに寛平さんの様子がおかしい。右足の甲が痛いという。昨日から足首の関節に痛みがあるといっていたので、ピンとくるものがあった。シンスプリントと呼ばれる走りすぎからくる障害だ。これは走りすぎやローアーチといわれる甲骨の低い足、キックの強い走りをするランナーによく起きる障害である。

 今まで、路面の砂を巧みに利用して、キックを使わない走りを続けてきた寛平さんだった。しかし、段差や勾配がきつくて路肩が使えないため、アスファルトを中心に走り、滑らないぶんだけキックを多用したので甲に負担が大きくかかったのだろう。勿論、もともと偏平足ぎみの足だし、3000kmも走ってきているから甲のアーチも落ちてきている、など複数の要素が溜まってそのストレスが甲にきたのである。

 この障害は、そのままで走り続けることは痛みが激しくできないし、無理をすれば炎症がさらに悪化して、取り返しがつかなくなってしまう恐れがある。現場でできる対処法は氷でできるだけ長い時間冷やすか、あとはアーチサポートをすることだ。スポンジ状のテープ(アンダーラップ)を土ふまずにあてがい、さらにインソール(中敷き)を持ち上げてアーチをあげる工作をすること。幸い、トレーナー池田君と整形外科医でもあるデビットがクルーにいるので彼らにその処置を任せた。

 しっかりとサポートをして試しに走ってもらうと、「おお、大丈夫や!!痛ない・・全然違うわ!!」それでもソックスをはくと多少の圧迫感が残るため、シューズの紐を思いっきり緩め、ほとんどスリッパ状態にして走ると、痛みは劇的に緩和され、しっかり走れるようになった。

 ウルトラマラソンをサポートしていると、今回のようなトラブルは至極当たり前のように起きるから、どんな障害が起きるか?を事前に十分検討し、想定してケア用品も準備しておく必要がある。そして、ランナーに何かあったとき、その状況を即時に判断して適切な処置を施さないと取り返しがつかなくなってしまう。寛平さんには地球一周という大きな目標があるし、オリンピックの招致大使という役目も担っている。この計画を体現し前に進めているのはまさに寛平さん。過保護にする、ということではなく必要な時に必要なことをランナーの身になって効果的に対処できるスタッフがつくということは、最優先で考えないと大きな夢も夢想に終わってしまう。

 まだ北米、工程はこれからが本番みたいなものだ。私は寛平さんの夢の実現に向かった文字通り歩を運んでいるから、その足がどんなことがあっても止まらないように!今回の出来事で気持ちを新たにしたのだった。

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