日本テレビ24時間マラソンを終えて

2009年9月 3日
24時間テレビ(2009)  24時間テレビイモトの126km激走は多くの視聴者・沿道の応援者に感動と元気を与えてくれた。

 仕事の都合で十分な練習を積むことができずに本番を迎えた本人はパンクしそうなくらいの重圧と緊張・不安を小さな身体で精一杯受け止めながらスタート時刻を待ったことだと思う。右膝の不安、練習不足、不規則な生活からくる疲労など劣勢をカバーするのは23才の若さと恵まれた下半身の筋力しかなかった。

 練習初日に痛めた右ひざは飛び跳ねる短距離ランナーゆえのフォームが引き起こしたもの。ウルトラマラソンのフォームは上下動を極力無くして地面を摺るように走らないと衝撃が大きくなり関節や靭帯に細かなキズをつけてしまう。イモトは初回の練習15km走で右外側靭帯を痛めてしまったため、以後の限られた練習では膝を上げずキックを使わない走り方を身につけることにポイントを絞ることにした。後は体幹部を鍛える筋力補強と筋疲労を取り除くための身体の手入れに重点を置くしかなかった。

 本番での走法も工夫が必要だった。126kmというビックサイトまでの道程には数え切れないアップダウンがあったため、下り坂は徹底して歩くことで膝への負担を減らし、走りは歩幅を狭く取ってピッチで距離を稼ぐ走りに徹してもらった。それでも無意識のうちに右足をかばう走り方になっていたから後半は左鼠頚部(大腿直筋・腸脛靱帯付け根)を痛める結果となり、その激痛を気力で凌ぎながらゴールを目指す。

 ビックサイトまで残り18kmあたりからは台風11号の余波で都心は大雨。イモトは疲労・痛みに加え雨による冷えにも苦しめられることになった。何度も腕の時計に目をやるイモト。やがて脇を走るテレビ中継車から流れるゴール会場の様子から時間内ゴール不可能を知ったイモトの目から溢れる涙が頬を伝わる。 イモトは強かった!降りしきる雨を衝いて懸命に腕を振る。前に出ない脚を引っ張るようにまた腕を振る。

 やがて、威嚇するようにも、大きな寛容を湛えた懐のようにも見えるビッグサイトのゲートがイモトの視覚一杯に広がった。階段を一歩ずつかみ締めるように、傷んだ両脚を引きずるようにしてのぼってゆくイモト。大雨にも関わらずぎっしり埋め尽くされるほどの出迎え観衆から悲鳴に近い音響となって「イモト、イモト」の声が周囲に反響する。ビックサイト会場繫がる階段をのぼり切ったイモトを「あとは一人で・・・」と、そっとリリースして見送った。時計は9時10分を少し回っていた。

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